COLUMN コラム

重要英単語のリスト化と、単語テストがこれから担うもの

2026年09月04日

 本コラムは、塾関係者の皆様へ英語教育や学習設計のヒントをお届けする連載企画の一環として、『塾と教育』2026年9月号に掲載載された記事を転載したものです。

 今回のテーマは、次期学習指導要領で議論される「重要英単語のリスト化」から考える、これからの単語テスト設計です。

 「教える単語を絞り込むことは、生徒の負担を減らすことになるのか?」教える単語を絞り込む動きの背景には、先生側の指導負担の軽減や、生徒側が基礎語彙を確実に定着させやすくなるという狙いもあるようです。ただ、その一方で、今後、学校教育が保証できる語彙の範囲と、入試で求められる語彙の範囲は、もしかすると乖離が生まれる可能性があります。
 
 その問いを手がかりに、あらためて「単語テスト」という活動の価値を捉え直します。何を目的にテストを設計するか、そこにICTを組み込む余地はあるのか、組み込むとすればどのようなメリットがあるのか。現場で役立つ、ICTとの効果的な向き合い方について整理しています。



語彙数をめぐる議論の変化

 大学入試や英検で問われる単語の数は、ここ数年で増え続けている一方で、 2026年に入り、次期学習指導要領の検討の中で、小学校・中学校で学ぶ英単語を絞り込み、重要な単語をリスト化するといった議論や案が浮上しています。狙いは入試の単語量を減らすことではなく、限られた授業時間の中で、何を教え、身につけさせるかをはっきりさせることにあります。教科書ごとの単語のばらつきを整理し、基礎語彙を確実に定着させる点において、非常に意義深い方向性と言えます。 

 ただ、この精査が対象にしているのはあくまで小・中学校の範囲です。近年、高校入試や大学入試の英語では、求められる語彙レベルは上がっています。小・中学校で学ぶ単語数を絞り込んだからといって、これらの入試で求められる語彙レベルが下がるとは考えにくく、その差を埋める役割は、結果として塾や家庭学習に委ねられることになりそうです。学校教育だけで語彙力を完結させることが難しくなるからこそ、塾が単語をどう教え、どう定着させるかという学習設計の重要性は高まっています。

 

単語テストという地味な活動の価値

 実際の単語テストへの取り組み方は、塾や教室によって差があるのが実情ではないでしょうか。定期的に取り組んでいる教室もあれば、形骸化してしまっている教室もあると思います。もったいない話だと感じるのは、単語テストが英語という技能科目の中で、生徒が努力の手応えを最も実感しやすい活動のひとつだからです。文法や長文読解のように成果が見えにくい学習と違い、覚えた分だけ点数に跳ね返ってくる構造は、生徒のモチベーション設計において塾が積極的に活用すべき機会だと言えます。認知心理学でも、思い出すという行為そのものが記憶の定着を促す「検索練習(テスト効果)」として知られており、想起すること自体に学習効果があるとされています。単語テストを高頻度で実施することには、こうした裏付けもあると考えられます。

 

単語テストの設計思想

 多くの教室では、同じ学年・クラスであれば同じ単語テストを課すやり方が定着しているのではないでしょうか。生徒ごとに完全に個別化しようとすると管理する側が把握しきれず、かえって現場の負荷を上げてしまうため、これは運用上自然なことだと思います。
 
 一方で、年間を通して同じ題材、同じ形式で取り組み続ける必要はありません。時期や目的が変われば、扱うべき単語も、問うべき力も本来は変わるはずです。例えば、学期前半は授業内容の定着を目的とした形式にし、入試が近づく時期は志望校の頻出語彙を意識した形式に変更するというように、クラス全体での統一された枠組みは保ちながら、題材と形式は一年の中で調整していく。まずはこのような運用が、現実的な単語テスト設計の出発点になるのではないかと思います。
 
 出題形式ひとつをとっても、和文英訳のスペリング問題、英文和訳の意味問題、空所補充、四択など、問う力はそれぞれ異なります。何を優先すべきかは、生徒によっても、目的によっても変わります。スペリングに苦手意識のある生徒には、まず意味の理解を優先させた方がいいこともありますし、同じ生徒であっても、定期テスト対策の場面ではスペリングを重視し、入試対策の場面では文中で単語を認識できる力を優先する、というように使い分けが必要になる場面もあります。こうした、生徒の状況と目的の両方を踏まえた使い分けこそが、単語テストを「ただのルーティン」から「設計された学習活動」に変える分かれ目になるのではないかと思います。

 

ICT・DXとの向き合い方

 こうした調整には手間もかかります。題材や形式を変えるということは、その都度テストを作り直し、採点し、結果を記録していく必要があるということで、統一テストを淡々と繰り返す運用に比べ、先生側の負担は増えてしまいます。
 ICTを用いて効率的なシステムに組みかえることもできます。。ただ、ICTを用いる価値はその先にあります。テストの形式は統一されていても、それへの準備の仕方まで統一する必要はありません。音声から入りたい生徒もいれば、紙に書いて覚えたい生徒もいますし、タイピングという刺激が定着を助ける生徒もいます。こうした準備の進め方を、先生が個別に用意しなくても生徒自身が選んで進められるようにすること。これこそがICTの価値だと考えます。
 ただし、ツールを渡すだけでは機能しません。なぜこのテストをやるのか、なぜ自分にはこのやり方が合っているのかを先生と生徒が一緒に言語化していくプロセスがあってはじめて、ICTツールは自走を支える道具として機能します。弊社の英語学習アプリ「ELST®」も、音声・スペリング・タイピングといった複数のアプローチを生徒が選べるように設計されたアプリのひとつです。

 

まとめ:目的から手段を選ぶ

 何のために、誰を対象に、どんな形式でやるのか。そして、そこに向かう準備をどう生徒自身のものにしていくか。目的から手段を選び、生徒が自分に合ったやり方で取り組めるように設計していく姿勢が、これからの単語テスト運用には求められているのだと思います。

 

 サービスに関するご相談・お問い合わせはこちら 

会社情報


株式会社サインウェーブ

高度なAI技術をベースに、教科書準拠・英検®対策・入試対策に対応した
英語学習アプリ「ELST®」シリーズを自社開発。

教育現場に寄り添う学習支援サービスを提供する教育ICT企業。

コラム一覧に戻る